

N様邸 構造材刻み作業:その4
一般住宅では珍しい、木組みの太鼓梁をふんだんに現わした建物の構造材刻み作業をご覧頂きます。
社寺建築など大型木造建築物では馴染み深い太鼓梁。伝統建築の木組みを構成する主要な構造材ですが、匠の技が施されているのにも関わらず、完成すると天井裏に隠れてしまい目にすることがありません。 太鼓梁1本1本の自然な曲がり形状を活かし、精緻に組み合わされた木組みのダイナミックな構造美を、そのまま室内意匠として現わす住宅の注文を受けて、社寺建築を手掛ける社員大工チームが施工を担当することになりました。
建物全体の構造材はコンピュータで作図されたデータによってプレカット加工されるのですが、木組み構造を現わしにする箇所のみ社員大工による手刻み加工を行い、2つを組み合わせて1棟の住宅に仕上げていきます。
プレカット工場から、太鼓梁との接合箇所を加工する梁・桁材と柱材が搬入されてきました。(平成27年9月14日撮影)
図面と照合しながら、柱一本ずつに太鼓梁の掛かる位置をスミ付けしている社員大工。
柱の並びごとに太鼓梁との高さ関係を示した建物の垂直断面図=矩計(かなばかり)図。
柱へのスミ付けが終わった後、梁・桁材に太鼓梁との仕口(しぐち:角度を持たせて接合する組手)をスミ付けしていきます。(平成27年9月15日撮影)
スミ付けの終わった梁材に、電動丸ノコで「腰掛け蟻掛け」という仕口の基準になる切れ目を入れていきます。
ノコ目を頼りにして、「蟻掛け」部分をノミで刻み、仕上げていきます。
「蟻掛け」部分を仕上げた後、太鼓梁の外周形状に合わせた「腰掛け」部分に深さをあわせたノコを入れていきます。
「腰掛け」部分をおおざっぱにノミで削り落とします。
梁材の仕上り面に電動ルーターを密着させて、「腰掛け」部分を同じ深さで削り取っていきます。
電動ルーターで彫り込んだ「腰掛け」部分。
回転するルーターの刃では削り切れない隅角部分を丁寧にノミで仕上げていきます。
電動工具と手ノミを組み合わせて、10分程度で仕口「腰掛け蟻掛け」が一か所仕上がりました。
プレカット工場から搬入されてきて3日目には、すべての構造材の仕口加工が終わりました。(平成27年9月16日)
梁・桁材と同様に、柱材も一本ずつ手仕事で仕口加工されました。掲載日 2015.09.24