Interview01
昭和60年建築の建物をリノベーション
想いを受け継ぐ住まい
神奈川県横浜市I様ご一家
01
縁を感じる住まいとの出会い
ご自宅の建築をお考えになったきっかけは何でしたか?
ご主人
これまで賃貸住宅で暮らしてきましたが家賃を払い続けても財産としては何も残らない。同じ住宅費用を払うのならば早めに住宅ローンを組んで自分の住まいを所有しようと思い立ったことがきっかけです。マンションや建売住宅まで幅広く探しました。娘が小学校を転校しないように、同じ学区内で住み替えを検討しましたがなかなか見つかりませんでした。
奥様
中古住宅付きの売り土地としてこの場所が出ていることを知った時にはすぐに見に行きました。高台の上に位置していて陽当たりもよく、天気の良い日には富士山も見通せる絶好のロケーション。築30年を超える建物は解体して好みの住宅を新築することができるということが分かり、予算さえ合えばほかに選択肢はありませんでした。工務店で新築する住宅の見積りも出してもらい、なんとか予算内で実現できる目途が付いたのでこの土地の購入を決意しました。
土地購入の契約を取り交わすまで、建物は解体するつもりでいたのですが、契約の席で前オーナーの方から今の建物を観てみませんかと申し入れがありました。「陽当たりや風通りの具合を知っておけば、新しい住まいの間取りにも参考になるでしょう」というのです。思いがけない申し入れでしたがご厚意に応じて拝見することにしたのです。
ご主人
築30年を超えた住宅と聞いていましたが、しっかりとした造りに驚きました。当時住んでいた賃貸住宅は築3年でしたが建具の立て付けが悪く、賃貸用の住宅はこの程度のものかと思っていたのに較べ、拝見した住宅は建具の開閉も問題無くこのまま住み続けられそうに思えました。前オーナーの娘さんから、子供時代の思い出話も伺いました。陽当たりの良い部屋、2階からの眺めの良さ、毎年フキノトウが現われる庭。楽しい思い出話からは子育てにも最適な住まいであることが伝わってきました。
前オーナーの奥様から菊池建設で建築したこと、この家を手掛けた大工さんと親交があること、家を手放すことを大工さんに伝えたら「壊してほしくない、リフォームするなら再び手掛けたい。」と言っていたことなどを伺いました。そして前オーナーの皆さんからもできることならこの家を残してもらいたいとの想いが伝わってくるのです。
奥様
木の家を建てたいと思っていました。でも和風住宅を希望していたわけではありませんでした。モダンなデザイナーズハウスをイメージしていたのですが、この家を実際に拝見し、前オーナーの方のお話を伺っているうちに「この家に関わった皆の想いを継いでいきたい。」と思うようになりました。
早速、菊池建設に声を掛けました。最初に接客してくれた女性設計士の対応の良さ、当時の施工図面が保管されていたこと、担当となった営業さんがこの家と大工さんのことを知っていたことなどが決め手になり、この家を残してリフォームすることを決意したのです。
前オーナーの方から、以前一度売却しようと売り出したものの買い手が現れず断念されたことがあったと伺い、今回の売却でこの家を残すことを決めた私たちと巡り会うために「この家が人を選ぶ機会を待っていた」ような不思議な縁を感じました。
02
皆の想いを継ぐ家づくり
プラン打合せの様子を教えてください。
ご主人
建物にかけられる予算は決まっていましたからはっきり伝えました。プランについては私たちの要望の前に、この家の良さ、残すべきものを菊池建設さんに見極めて教えてもらうことから始めました。間取りの変更は柱や壁など構造上の判断によって、できるできないがありますし。
奥様
社員の方からこの家に使われている材料のこと、日本家屋の設えや意匠のことなどいろいろ教えてもらい、この家の価値を知ることができました。前オーナーの想い、その想いをカタチにした菊池建設と大工さん、職人の皆さんの丁寧な仕事ぶりが日本の文化でもあるように思えました。
この家と出会って和風の良さや日本の伝統文化を受け継いでいく使命感のようなものが芽生えてきました。注文住宅は自分の思いだけ、利己主義な考えになりがちですが、建てるのであれば社会的貢献ができればより素晴らしいことですし、この家に関わって頂いた人たちにも幸福感が必要だと思いました。そんな思いを持つようになったのは、この家にまつわるストーリーに触れて価値を知ったからです。
その価値を損なうことなく、私たちの要望も反映したリノベーション・プランを上手くまとめられたのは菊池建設だからです。とくにキッチン廻りを中心に使いやすいプランを提案してくれた女性設計士の方の役割は大きかったですね。
キッチンの向きを南側のリビング(お茶の間)に対面する配置に変えました。2階を支えている柱を残した対面キッチンを使いやすく実現しながら、食器収納や食品庫を小部屋にしてキッチンの背面に並べるプランは女性ならではの提案でした。さらに娘の勉強道具や家族の書籍を収納する書庫も加えた3つの小部屋を並べ、入口の上部をアーチ型にした可愛らしいプランです。書庫の隣は家事室と娘の勉強部屋を兼ねた「母と子の場所」にしてもらいました。キッチンに居ながら娘の様子もうかがえる私のお気に入りの場所です。
また洗面化粧台をオリジナルデザインでつくってもらいました。朝の洗面室ラッシュを解消するために幅広い無垢板のカウンターに2つのボウルを並べました。古い洗面台を単に更新するだけでなく使い勝手も見直した洗面室も気に入っています。
ご主人
見学を勧めてもらった展示場モデルハウスや完成現場の建物は全部見に行きました。見学から、いろんなプランのアイデアが得られました。小上がりの床に縁無しの目積め畳を敷きつめた堀座卓のお茶の間は、松戸展示場モデルハウスのダイニングを参考にして取り入れてもらったものです。
食品庫の丸窓は完成現場のお宅で見かけたものを家内が気に入って我が家でも取り入れてもらいました。モダンで可愛らしいデザインの下地窓ですが、女性同士の設計打合せは楽しそうでしたね。
03
新しい家族の記憶を刻み始めた住まい
この家ではほかにもご縁を感じる出来事があったそうですね。
奥様
大黒柱伐採会に誘ってもらい家族全員で参加しました。偶然にもその日は娘の誕生日でした。大黒柱となる檜は娘が選びました。目の前で伐り倒される様子を体験して感動しました。とても印象的な記念日になりました。工事が始まり、製材された大黒柱はいつ我が家に入れられるのかと思っていましたが、ある日棟梁から伝えられた大黒柱を入れることに決めた日が私の誕生日だったんです。偶然というより運命的なものを感じました。一段とこの家に愛着が湧いた出来事でしたね。
主婦にとって住まいはとても関心の高いもので、古い住宅をリノベーションした我が家はママ友の注目を集めました。我が家を訪れたママ友の皆さんは「気持ちが洗われる気がする。パワースポットに来たみたい。」と言いながら元気になって帰っていくんです。そのうちの一人に菊池建設でご自宅を建てた方がいっしゃって大変羨ましがられました。というのも、とてもお気に入りのお住まいだったそうですが、転居しなければならなくなり泣く泣く手放されたそうです。「あなたが菊池建設の住まいに住んでくれてうれしい。」といわれて私もうれしく思いました。この家の価値を認めてくれる人が身近にいて心強く、また一段と愛着が増しました。
和室入口の引き戸が印象的ですね。
ご主人
古民家再生の流れで古材の引き戸を探してきて使うつもりでしたが思うようなものが見つかりませんでした。いろいろ探しているうちにこの「組子障子」を家内が見つけたんです。「組子」とは釘を使わずに木を組み合わせる繊細な日本の伝統木工技術だそうです。この家に住むことを決めなければ知ることもなかったでしょう。日本の伝統文化についても少しずつ知識が増えてきました。
奥様
和室入口の組子障子に使われた文様は「麻の葉」です。麻は古来神聖なものとして神事にも使われ、「麻の葉」文様には魔除けの意味が込められているそうです。お茶の間から玄関クローゼット室への明り取りになる欄間には、主人が選んだ「胡麻」文様の組子欄間を入れました。栄養豊富な「胡麻」の実は薬に使われた時代もあり、この文様には、家族の健康と長寿を祈る意味もあるそうです。どちらもデザインが良いだけでなく縁起も良いものを選べたと思っています。
この家を受け継ぐことを決めてから、日本の文化や知識をいろいろ知ることができました。訪れる人たちにお話しすることが楽しくてたまりません。これからこの家で私たち家族の想い出が刻まれていくのだと思うとワクワクしますね。
33年前に建築した住宅を高く評価して頂き、リノベーションの機会も与えて頂きまして誠にありがとうございました。1軒のお住まいに寄せられた多くの方の想いを受け継ぐ決意をされた新しいオーナーご家族に心より敬意を表します。これからも皆様、末永くお元気でお暮らし下さい。本日はありがとうございました。