
毎日を過ごすわが家は、果たして家族の健やかな暮らしを支えているのだろうか。できれば健康にいい自然素材の木材で住宅を造れないものか。こんな思いを抱いたユーザーが増えている。ひと味もふた味も違う木へのこだわりを持ち続ける菊池建設の中尾由一社長(当時)に、昨今の木造住宅ブームについて伺ってみた。
「住宅は木造であればいいという風潮が昨今あります。しかし、それだけでは、本当の意味で人間が住む家にはならない。人間が住む家は、なんとしても『家族を守る住宅』でなければならないと私は思っています。そこに住む家族が心身ともに健康な毎日を送るためには、人間に害を及ぼすようなものを徹底的に取り除くように努め、人間の本来の暮らしとは何かを常に考えた家が欠かせません。そのためには、木のこと、住宅のことを知り抜いて、どんな家が理想なのかを見極める必要があります。そこで当社が行き着いたのは、『原点に返る』ということでした。
例えば、住宅の室内環境が原因となって、そこに住む人間の体にさまざまな悪影響を与えるシックハウス症候群があります。住宅だけの問題ではなく、これにはさまざまな分野で化学物質を多用するようになった歴史的背景があります。
ではこのような問題はいつから起きたのかといえば、ここ数十年のこと。日本の長い歴史からいっても、つい最近のできごとで、少し昔の日本の家、例えば戦前に建てられた住宅などでは、起こっていませんでした。
昔の家とは、住宅に適した日本の木を使い、伝統的な柱と梁で組んだ軸組工法で建てた家のことです。戦後の一時期を除いて、何百年と続いてきたそんな昔の家こそが、実はこの国に最も適した理想の住宅だったのです」
なぜ理想の住宅は木でなければならないのか。なぜ日本の住宅に「家族を守ることができない住宅」が多くなってしまったのか。

「まず、意外に思われるかもしれませんが、木は鉄やコンクリートよりも丈夫で長持ちすることが挙げられます。鉄やコンクリートなどの人工の材料は、できた瞬間が最も強く、時とともに劣化していきます。一見丈夫そうなコンクリートも風化(酸化)するため、100年、200年と持つものではない。しかし、木は違います。
当社は寺社建築の実績から、江戸時代に建てられた古い建物を再生する仕事をいただいています。そんなときに解体作業で骨組みをいったんはずし、再び差し込もうとしても入らないことがよくあります。木が『やれやれ』と背伸びをするようなものなのでしょう。そのような場合は、決して削ってはいけない。叩いたりして収めていくのですが、そんなときに、数百年という歳月を経ても木は生き続けているということが実感としてわかります。
檜でつくられた奈良の法隆寺五重塔は、建ってから1300年を経たいまも改修をくり返しながら新材と同じ強度を保持しており、堂々たる世界最古の木造建築としての姿を示しています。木は切り倒され、建物の材料となったあとも、呼吸を続け、長い年月を生き続けていく。檜でつくった木の家が、何世代も住み続けられる理由もそこにあります。
実際、いまの住宅には『日本住宅性能評価基準』が定められており、どれくらい長持ちするか、『劣化の軽減措置』に対して等級をつけています。一等級はこれまでの建替需要から判断すると、20年から30年程度になるでしょうか。二等級は50年から60年、三等級は75年から90年持つことが見込まれており、私たちが使っている檜は、最もグレードの高い三等級の評価を受けています。
日本の檜が人間でいう成人にあたるのはほぼ60年を経た時期で、その頃から伐採されて建材となります。建材になってからの檜は、それまで生きてきた年月の二倍は確実に持ちます。
一等級の20年しか持たない家と、それの何倍も長持ちする檜の家では、まったく評価が違うのは当たり前です。20年しか持たない家は、一代のうちに建て替えを迫られることがあるかもしれないし、子供の代ではどうしても建て替えざるをえません。その費用からいっても、三世代にわたって暮らすことができる檜の家には、計り知れないメリットがあります。
もちろん時代の変化によって暮らしぶりは変わっていきます。そんなときも、いい材を使い、伝統的な建築法で建てた家は、変更がより簡単で済みます。台所を変えたい、トイレを変えたいという場合でも、そこだけ直せばいい。骨組みがしっかりしていれば、どんなリフォームにも対応できます」
(このインタビューは平成15年6月に行われました)





































