
三角形の木材を水平に壁のように組んだ校倉造(あぜくらづくり)の建物である奈良・東大寺の正倉院。1300年の長きにわたって聖武天皇の貴重な御物を守ってきたことで知られています。
校倉造は木が水分を吸収すると膨張し、雨の侵入や余計な湿度が入り込むことを防ぎ、乾燥すると収縮して空気を内部に入れて換気を促す。かつて教科書などにも記載されていた庫内の環境を一定に保つという「校倉呼吸説」ですが、宮内庁などの調査によると、木自体の膨張・収縮はそれほど大きくなく、年間で見ると季節によって庫内の湿度・気温に変動があることがわかりました。
しかし、正倉院を調べるうちに、木が持っている大きな働きも明らかになっています。正倉院の秘密は、御物がスギでできた唐櫃(からびつ)と呼ばれる箱に納められ、二重の木で守られていたこと。
湿度は庫内の湿度が外気温の変動幅の5分の1ほどだったのに対して、唐櫃の内側は50分の1と変動がとても少なく、木の箱に湿度をコントロールする極めて高い能力があることが、ここでも証明されました。
調湿能力が高い木材
内装の違いによる住宅内の湿度変化
「則元京 他 木材研究資料No.11.1977」より
空気中の湿度が高いときには水分を吸収し、湿度が低くなれば水分を放出するという木材の「調湿機能」は、とくに湿気の多い日本にとって大きなメリットがあります。
湿度の高すぎ、低すぎは不快なだけでなく健康にとってもマイナスばかり。天候や四季に応じて湿気を調節してくれる木造の家は、家族の健康にいいだけでなく、結露が少ないなど家自体の「健康」にも効果があります。
また、人々が集まる公共の場所や学校でも、木材の持つ調湿機能や断熱性、保温性などが健康保持に役立っていることもわかっています。
例えば、鉄筋コンクリートの学校に比べて、木造校舎の学校では、流行期にインフルエンザによる学級閉鎖の割合が半分以下だった例もありました(※1)。
また、特別養護老人ホームにおける調査でも、木材を多く使用している施設では、入居者のインフルエンザにかかる割合が、木材使用の少ない施設より低いという調査結果が出ています(※2)。日本のような湿度の高い地域では、木でできた家に住む。これも歴史が教えてくれた知恵なのです。
- ビール瓶2.5本分の水分が角材1本の中に蓄えられている
- 木材は乾燥状態で、その質量の12~15%程度の水分を含んでいます。軸組工法の木造住宅に使用される柱には、10.5cm×10.5cm×3mの角材がよく使用されますが、これに含まれる水分を計算すると、ビール瓶2.5本分もの水分を含んでいることになります。木材は湿度が高くなると30%ぐらいまで空中の湿度を吸収し、乾燥すると水分を放出しています。無機質の材料はこのような作用がないので、結露を生ずることになります。






































