2010.08.17閑話その1:内と外の中間ともいえる空間
先日、知人と話をしていて気付いた日本の住宅の特徴と文化について、いくつか挙げてみたいと思います。 脈絡のない話になりそうですがご容赦下さい。
話の発端はリビングから出入りできるウッドデッキなど、室内と屋外の中間に位置するような空間を住宅に取り入れることが注目されていますが、そもそもこの内とも外ともとれる曖昧な(という言い方がよいのか判りませんが)空間は目新しいことでもなく、古くからの日本の住宅にあったのではないだろうか、という会話に興じたことから始まりました。

知人との会話では、いろんな論点に及んだため、ここでは少し整理しながら話を進めたいと思います。 まず室内=建物の内側とは、屋根、壁(または建具)、床の3要素で囲まれていることと定義します。
すると今回話題の対象となる中間ともいえる空間は、これら3要素の内のいずれかが欠けていて屋外との接点がある建築物、ということになります。
例えば話の発端となった、近年人気のウッドデッキは屋根と壁の無い床だけの建築物です。 雨風や日差しを遮るものがありませんから、天気の良い日にしか使えませんが、バーベキューやガーデンパーティなど開放的な屋外でのレクリエーションにはもってこいの場所です。 従来日本人の感覚でいえば花見や月見、花火見物を楽しむ場所というところでしょうか。
ところで床だけの建築物を一般的な日本の住まいで捜してみましたが、思い浮かびません。 花見を楽しむ時には敷物を持ち出し、月見や花火見物には縁台を持ち出せばよく、吹き晒しになる床を屋外に常設しておく習慣はないように思えます。 京都の夏の風物である納涼床(川床)が最もウッドデッキに近いものですが夏限定の仮設物ですから、ウッドデッキは従来の日本では見掛けなかった、現代的な建築物だといえます。
ならば日本固有のものはどうかと考えてみますと、多くのもので屋根だけは欠かせないようです。そのことを3つのパターンに分けて確認してみたいと思います。

まず床だけが無いのが土間床。 炊事場や納屋、家畜舎など、雨風を凌ぐことのできる屋内ですが、土足で出入りができて屋外との連携の良い作業場のイメージです。

つぎに壁(または建具)だけが無いものの代表が縁側でしょう。 座敷の外側に設けられた板張り床の廊下部分を指し、吹き晒しのものを外縁、雨戸のあるものを内縁といいます。 現代ではガラス障子が嵌まっていて、すっかり室内のイメージですが、従来の縁側は夜明けとともに雨戸を外すと、日中は外部と遮るものはありません。 真冬でも開放されて日当たりがよいので、農作物や食料品の日干しをする場所にも利用されてきました。

そして屋根だけの場所、軒内(のきのうち・軒下の空間)は縁側とともに特徴的な日本の建築物だと思います。 日本は雨の多い風土ですから、建物周囲に雨に濡れない場所を確保していくことは理に適っています。 軒内を広くするために地面に独立した柱を立てて桁を差し渡し、建物本体から垂木を掛け渡した土庇(どびさし・つちびさし)は、縁側や玄関の外側に設けられることが多く、人の出入りとともに雨が室内に吹き込むのを防いでいます。 また、夏の強い日差しも遮ってくれます。 風通しは抜群に優れているため、特に梅雨から夏の時期を快適に過ごすためには大変重宝する建築物です。 住宅とは異なりますが庭園などの休憩場に使われる東屋(あずまや・四阿とも書きます)も独立柱に屋根を設けた建築物。 社寺の手水舎、鐘楼、相撲の土俵屋根なども雨晒しにしたくない場所に屋根を差し渡したものとして共通しているように思えます。
こうして見てみると、軒内を確保して不意の雨に備えておくことは、日本人の生活の知恵のように思えてきます。 そしてこの軒内を第三者に提供することが、もてなしの一つになっているように感じるのですが…。 このあたりの話は次回にしましょう。(投稿者:M.H)






































