2010.01.14本物の住まいとは:その5
本物志向のなかには、「昔ながら」を求める傾向が強くあります。 浴室を例にとって、時代のニーズに適していることが何よりも重要であり、現在主流のシステムバスルームを偽物とは言いません、というお話をしましたが、それでも昔ながらの檜風呂や天然石貼り風呂を要望される方もいらっしゃいます。 最新システムバスルームがいかに完成度の高いものであっても、それ以上に昔ながらの素材が持っている、感性に訴えかけてくる風合いや質感に魅力があるからです。
この点については最新の技術をもって真似てみても、本来の素材にはかないません。 昔ながらのものを活かしたければ、扱い方も昔ながらの方法にならえばよいだけです。 ただし一般的には手間暇かかることが多くなることを十分納得頂かなければなりませんが。 それでもその手間暇かけることが貴重な楽しみでもあるのです。

現代の日本社会ではあらゆるものがデジタル化しています。 家電製品は当然ながら、オモチャや雑貨品にもICチップが埋め込まれ、便利で機能的なものが溢れています。 しかしこのデジタル機能は故障すると素人には修理できません。 専門家に修理を依頼すると新品よりも費用が高くなってしまい、結局買い替える方が経済的になってしまいます。 愛着を持って長く使おうと思っても、手入れや修理が容易にできないことがデジタル製品の一番の欠点だといえます。 近年アナログ愛好家が増えてきたことはデジタル製品にはない風合いや質感と共に、手間暇かける楽しみがあることが大きな理由でしょう。
住宅を趣味的なものに例えることは乱暴ですが、将来にわたり末永く愛着を持って使って頂くためには、いつの時代になっても補修や交換が可能なつくりになっていることが重要であることには違いありません。 特に壁材や屋根葺き材、建具などが職人の手作業で補修・交換可能な材料や部品でできていること。 そのためには特殊な素材やデザインされた工業製品を多用しないこと。 そう考えてくるとおのずと「昔ながら」のつくり方に着目することになります。
とはいえ、やみくもに何でもすべて「昔ながら」が良いとはいいません。 住宅の場合には近年、耐震性や耐久性、省エネルギー(断熱)性能の向上が図られてきています。 一昔前には日本の家は「数寄屋」ならぬ「隙屋」と皮肉られ、自然換気に優れているといえば聞こえが良いのですが、気密性に乏しい建物でした。 気密性が低いと漏気(空調した室内から空気が漏れ出す現象。 冷暖房するほど外気との温度差が大きくなり漏気量も増えます)が発生し、冷暖房効率を悪くさせます。 断熱材の性能に関係なく、窓を開けっ放しにしているようなものです。(ちょっと極端な例えですが…。) 現在の建物は耐震性を確保するために床・壁・天井を構造面材で囲うような施工が主流となったため、気密性も向上して省エネルギー住宅と呼ぶに相応しいものになりました。 これら住宅の基本性能となる部分については最新の設計と施工技術で、しっかりと将来を見越した良いものを取り入れるべきです。 その上で普段の生活で目にし、触れる仕上げ部分に「昔ながら」の素材を使い、毎日の生活の中で慣れ親しみ、可愛がるように手入れを楽しんで頂きたいと思うのです。 (投稿者:M.H)






































