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2009.08.31本物の住まいとは:その1

当社は創業以来、国産檜の無垢材を使った住宅をつくってきました。 当然“檜造り”を会社の特徴としてアピールすることになります。 例えば「国産檜の無垢材」は本物の檜の材料。 本物の檜の材料を使った住宅だから「本物の住まい」といった三段論法のようなセールストークを使った時期もあったようです。 「当社の建物は国産檜を使った本物の住宅ですから他社のものとは違います」というような。 当時からこの「本物の住まい」とは何を根拠とするのか、いろいろと議論がありました。
「本物」という言葉には、偽りない価値のあるもの、という信頼と優位性が感じられます。 その一方で、確証がなければ安易には使えない潔い厳しさもあります。 誰もが納得できる根拠を持たなければ、気安く使ってはならない言葉だと思っていますが、いかがでしょうか。

そもそも「本物」とはどのような意味があるのか広辞苑で調べてみますと、
 【1.にせものでないこと。実物。】
 …おっしゃる通りです。 もうひとつあります。
 【2.技芸などが、素人ばなれしていて本格的なこと。「本物の腕前」】
 …住宅の良し悪しを論ずる場合には、こちらが適用される様な気もします。 でも単に「素人ではないプロがつくる」ということになってしまうと、何処の会社でもセールストークに使えてしまい、ありがたみが弱くなります。 もっと「こだわり」や一途な想いを論じていきたいので、参考程度に留めておきましょう。

本物と偽物、どちらに価値があるのかといえば、一般的には本物だということになるでしょう。 だからといって偽物に価値がないと断言することもできません。 従来使われていたものを本物とし、それに似せた模造品を偽物とするなら、現代社会ではかなりの偽物が本物に成り済ましていることになります。 むしろ需要に応じて使われる素材が見直され、別のものを採用するようになってきたという方が適切かもしれません。 従来主流であったものも、時代のニーズにそぐわなければ、主役の座を他のものに譲り渡さざるを得なかったということでしょう。

日用雑貨や食器、衣類、装飾類、履物などは特に顕著なもので、従来天然素材が主流であったものが合成樹脂、化学繊維、軽合金、複合素材などに様変わりしました。 木や竹、紙を素材にしていた食品包装材や食器類は、衛生的で耐水性に優れ軽くて丈夫、大量生産に適していて手頃な価格のプラスチック系素材に変わりましたが、そのことに不満を感じる人は少ないでしょう。

住宅においても時代のニーズで様変わりしたものがあります。 その代表的なものが浴室でしょう。 昔から檜風呂の良さには定評があります。 しかし檜風呂は魅力的でも、カビなどに汚染されないようコンディションを保つための手間暇に負担を感じる人は多く、むしろ現代では抗菌仕様の浴室設備を望む方が主流です。 こうしたシステムバスルームの床や浴槽、カウンターには、御影石や大理石などを模造した素材が好んで使われます。 本物ではありませんが人気があります。 見た目に高級感がありながら本物より安く、機能性もあり、気軽に取り扱えることが理由です。 そして、これらのシステムバスルームを「偽物」だとはいいません。 なぜならば、浴室においては「湯水を存分に使っても設備として不都合なく、安全・快適に入浴できること」が優劣評価の基準となるからです。 この基準を満たせなければ、例え総檜造りであったとしても浴槽から水漏れがしたり、湯水を使ううちに壁や床がはがれたり崩れたりすれば、「浴室の用途を果たせない」=「役に立たない浴室」=「偽物の浴室」といわれても仕方ないでしょう。

こうして考えてきますと、「本物の住まいとは」を論じる際には、使う材料を議論する前に、住宅として求められる機能や性能に対して、どの程度の満足度に達しているのか、ということが優先されるようです。次回この点から、あらためて考えてみたいと思います。(2009.08.31 投稿者:M.H)

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